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働き方改革等の推進

行政書士 ​西浦 邦子

行政書士 ​西浦 邦子

日本行政書士会連合会 兵庫県行政書士会阪神支部

この記事の執筆者:行政書士 ​西浦 邦子

一般民事に精通した法の知識と実務経験で、行政書士業務を行っております。建設業許認可申請全般のサポート業務について許可取得のご相談から作成までワンストップで対応させていただいております。LGBTQなどのマイノリティと周囲の方のサポートも行っております。

就業者の現状

<就業者数ピーク> <建設投資ボトム> <最  新>
建設業就業者 685万人(H9)➡ 504万人(H22)➡ 483万人(R5)
技術者 41万人(H9)➡ 31万人(H22)➡ 38万人(R5)
技能者 455万人(H9)➡ 331万人(H22)➡ 304万人(R5)

年齢階層別の技能者数

*総務省「労働力調査」(令和4年平均)をもとに国土交通省で作成

  • 60歳以上の技能者は全体の4分の17%)を占めており10年後にはその大半が引退することが見込まれる。
  • これからの建設業を支える29歳以下の割合は全体の約12%程度で若年入職者の確保と育成が喫緊の課題となります。

➡担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体として進めることが必要!

 

【公共工事:平準化の趣旨・目的・効果】

現在および将来の公共工事の品質確保とその担い手の中長期的な育成・確保を図るため、平成26年6月に公共工事の「品質確保の促進に関する法律」が改正されました。同法においては、発注者の責務として計画的な発注と適切な工期設定に努めることが新たに定められるとともに、同法に基づく「発注関係事務の運用に関する指針」等において発注者は債務負担行為の積極的な活用などにより発注・施工時期等の平準化に努めることとされました。

公共工事については、予算成立後に入札契約手続を行うことが一般的であり、第1四半期は工事が減り、年度末に工期末が集中する傾向にあります。このような年度内の工事量の偏りを解消し、年間を通した工事量が安定することは、発注者からみれば施工確保対策、中長期的な公共事業の担い手確保対策にも資することとなりまた、受注者からみると、企業経営の健全化や労働者の処遇改善、稼働率の向上による建設業の機械保有等の促進などの効果も期待され、建設産業システムの省力化・効率化・高度化に寄与することが考えられます。

 

【公共工事:地方公共団体における平準化に向けた取組事例「さしすせそ」】

閑散期➡4月~6月(3カ月間)➡業務量が少なく労働者の収入が少なく不安定となる

繁忙期➡12月~翌年1月から3月(4カ月間)➡業務量が多く、人材不足や長時間労働が懸念される

そこで、地方公共団体における平準化の先進事例「さしすせそ」

「さ」債務負担行為の活用

債務負担行為を活用して複数の年度にまたがる契約を行うことにより、年度当初の閑散期(4月~6月)においても工事の施工が可能となり施工時期の平準化につながります。

「し」柔軟な工期の設定

余裕期間制度の活用により、例えば受注者が工事開始日や工期末や選択しやすくなるなど受注者は人材や資機材の調整を行いやすくなるため工事の円滑な施工が見込まれます。

「す」速やかな繰越手続き

悪天候や用地の関係など年度内に支出が終わらないやむを得ない事由が発生した場合には、年度末を待つことなく速やかに繰越手続きを開始することにより受注者は年度内の完成を早期に見直すことができ余裕をもって人材・資機材のやりくりを行えるようになります。

「せ」積算の前倒し

発注前年度のうちに設計・積算までを完了させることにより、発注年度当初に速やかに発注手続を開始

「そ」早期執行のための目標設定

年末から年度末に工期末が集中することが無いよう事業量の平準化等に留意し、上半期(特に4月~6月)における工事の執行率(契約率)の目標を設定し早期発注など計画的な発注を実施

【建設業キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価等を反映した手当支給の実施事例】

能力評価等を独自の手当てに反映する取組を50社超の元請が実施・検討され優良事例について水平展開を継続し、技能者への手当は、下請企業から支払われるもの、元請企業から直接支払われるものいずれも労務単価に反映しているようです。

事例

  • CCUSレベル別の優良技能者制度を実施(青500円、銀1,000円、金2,000円、特に模範となる方3,000円を支給)
  • 優良職長認定条件にCCUSカード保持を義務化、協力会の規則でCCUS加入を義務化、CCUSカードの色に応じた優良職長の手当について運用開始(レベル2以下:1,000円(現場マイスター)・2,000円(エリアマイスター)、レベル3以上3,000円(スーパーマイスター))
  • FPSマイスター制度にCCUSレベルを反映(銀1万円、月・金5万円支給など)
  • 評価制度をCCUSのレベル基準へと転換(青以下2,000円、銀3,000円、金3,500円支給、推薦要件も検討)
  • CCUSの金カード保有者に対し、手当日当を200円支給、カード色別手当の導入についても検討中
  • 職長制度・報奨金制度の前提、民間工事において半額負担としていた建退共掛金をCCUS登録技能者に対し全額負担など

労務費調査を用いてCCUS技能者の処遇改善につなげる取組

また、労務費調査を用いてCCUSの技能者の技能・経験に応じた賃金実態を把握し、レベル評価された場合の賃金目安を示すことにより能力評価が賃金に反映される方策について検討中です。

*令和4年度の労務費調査では、CCUS登録技能者(レベル4)の平均賃金はCCUS登録技能者(レベル13)より約15%高い実態

*国土交通省データによる。

【公共発注者による活用に向けた建設業キャリアアップシステム(CCUS)のシステム改修の概要】

発注者が建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用し、CCUSモデル工事など当該工事置けるCCUSの利用状況の確認や工期内における技能者の週休2日の達成状況を効率的に確認できる措置

(元請けの同意を前提として発注者にIDを付与し個人情報の保護に留意しつつCCIS画面の一部を確認できる仕組みを整備)

 

施工体制台帳等の帳票の確認

【デジタル化を推進するべく下記、帳票の確認を可能とする】

  • 施工体制台帳の帳票
  • 作業員名簿の帳票
  • 施工体系図の帳票
  • 下請負業者編成表・再下請通知書の帳票
  • 社会保険加入状況の帳票

元請けがすでに出力可能な帳票について公共発注者も確認できるようにする。

発注工事におけるCCUSの利用状況の確認

【CCUSモデル工事など発注工事におけるCCUSの利用状況の確認を可能とする】

  • 技能者のCCUS就業履歴の蓄積状況
  • 事業者のCCUSの登録状況
  • 技能者のCCUS登録状況

レベル別・職種別の「各技能者のCCUS就業履歴の蓄積状況」も確認可能とする(全工期まとめての集計とすることを検討。竣工時のレベル、職種は55職種により集計を行う。)

技能者の該当工事における週休2日の達成状況の確認

【当該発注工事の工期内における技能者の週休2日の達成状況を確認できる必要】

  • 技能者の週2日の達成状況

さらに発注者として立場から合理的な利用目的がある場合に限り、元請けの同意を条件として当該工期内における技能者の他工事も含むすべての現場における就業実績についても一覧的に確認することができるよう措置する(事業者と技能者の同意も別途必要とする。)